2012年に公開された『おおかみこどもの雨と雪』は、細田守監督による感動的な親子愛をテーマにした作品です。しかし、公開から10年以上経った今でも『おおかみこどもの雨と雪』は「気持ち悪い」「つまらない」といった厳しい評価を受けることがあります。この記事では、そんな評価の理由から作品の魅力まで、詳しく解説していきます。
『おおかみこどもの雨と雪』の基本情報とあらすじ
まずは作品の基本的な情報から見ていきましょう。
作品概要
『おおかみこどもの雨と雪』は、細田守監督が手がけた長編アニメーション映画です。脚本は細田守監督と奥寺佐渡子が共同で執筆し、キャラクターデザインは貞本義行が担当しました。物語の舞台は東京の郊外から始まり、後に富山県の山間部へと移ります。主人公の花を宮崎あおいが、おおかみおとこを大沢たかおが声優として演じています。
あらすじ
大学生の花(19歳)は、ある日講義で出会った青年に心を奪われます。実はその青年は、絶滅したはずのニホンオオカミの末裔である「おおかみおとこ」でした。二人は恋に落ち、やがて「おおかみこども」である娘の雪と息子の雨を授かります。しかし、雨の出産直後におおかみおとこは事故で命を落としてしまいます。
一人になった花は、人にも狼にもなれる特殊な子どもたちを育てるため、人里離れた山奥の古民家へ引っ越します。そこで13年間にわたって子育てに奮闘し、最終的に雪と雨がそれぞれ「人間」と「狼」の道を選ぶまでを描いた物語です。
おおかみこどもの雨と雪「気持ち悪い」と言われる理由
多くの視聴者から支持される一方で、なぜこの作品は「気持ち悪い」と評価されるのでしょうか。
主人公・花への違和感
最も多く指摘されるのが、主人公である花のキャラクター設定です。花は常に笑顔を絶やさず、どんな困難な状況でも前向きに対処します。父親から教わった「つらい時でも笑顔でいる」という教えを忠実に守り続ける姿は、一見美しく見えますが、多くの視聴者には不自然に映ります。
特に女性視聴者からは「理想化された母親像の押し付け」として批判されることが多いです。現実的な母親の苦悩や葛藤が描かれておらず、自己犠牲的な母性愛のみが強調されている点に違和感を覚える人が少なくありません。
おおかみおとこの存在の薄さ
花の恋人であるおおかみおとこについても、多くの疑問が寄せられています。作中では彼の魅力的な部分がほとんど描かれておらず、花がなぜ彼に惹かれたのかが視聴者に伝わりません。大学に忍び込んで勉強する真面目な一面を見せながらも、学生の花と子どもを作り、その後唐突に死んでしまうという展開に納得できない視聴者も多いようです。
監督の趣味嗜好の反映
細田守監督の個人的な好みが強く反映されているという指摘もあります。特に「ケモノ耳」の子どもたちの描写や、10歳程度の雨が美少年として描かれている点などは、監督の趣味嗜好ではないかと疑われています。また、父親不在の家族構成も、監督の理想とする家族像の現れとして批判されることがあります。
作品の魅力とメリット
批判的な意見がある一方で、この作品には多くの魅力も存在します。
美しいアニメーション表現
本作最大の魅力は、四季を通じて描かれる美しい自然の描写です。山下高明による作画監督と大野広司による美術監督の手により、日本の田舎の風景が繊細で美しいアニメーションとして表現されています。特に花が住む古民家周辺の自然の変化は、季節の移ろいと共に見る者の心を癒してくれます。
普遍的な親子愛のテーマ
母親と子どもの13年間にわたる成長の物語は、多くの視聴者の心に響きます。子どもが成長して親離れしていく過程や、子どもの選択を尊重する親の姿は、現実の親子関係にも通じる普遍的なテーマとして描かれています。特に子育てを経験した視聴者からは、花の子どもたちへの愛情に共感の声が多く寄せられています。
多様性と選択のメッセージ
「人間」か「狼」かという選択を迫られる子どもたちの物語は、現代社会の多様性問題とも重なります。雪と雨がそれぞれ異なる道を選ぶ姿は、個人の選択の自由や多様性を認める重要なメッセージとして受け取ることができます。
視聴者の賛否両論
この作品に対する評価は、視聴者によって大きく分かれています。
批判的な意見
「ストーリーが場当たり的で登場人物の行動に一貫性がない」「監督の理想が押し付けがましい」「子どもが見るには重すぎる内容」といった批判が多く聞かれます。特に花が母子家庭支援制度を利用せずに田舎へ引っ越すという選択や、雪が川で溺れているのに雨を優先して追いかけるシーンなどは、視聴者の共感を得にくい部分として指摘されています。
肯定的な意見
一方で「母親の愛が美しく描かれている」「子どもたちの成長が感動的」「自然の描写が癒される」という肯定的な評価も多数あります。特に子育てを経験した視聴者からは、花の献身的な子育てや子どもたちの無邪気な姿に心を打たれたという声が寄せられています。
どこで見ることができるか
現在、『おおかみこどもの雨と雪』を視聴する方法はいくつかあります。
動画配信サービス
主要な動画配信サービスでは、期間限定で配信されることがあります。Amazon Prime Video、Netflix、U-NEXTなどで不定期に配信されているので、各サービスで検索してみてください。
レンタル・購入
DVDやBlu-rayのレンタルは、TSUTAYAやGEOなどの店舗で可能です。また、デジタル配信では、Amazon Prime Video、iTunes、Google Playなどでレンタルまたは購入できます。
テレビ放送
夏休みや冬休みなどの長期休暇中に、地上波やBS放送で再放送されることがあります。特に金曜ロードショーなどの映画番組で放送される可能性があるのでチェックを。
まとめ
『おおかみこどもの雨と雪』は、美しいアニメーション表現と普遍的な親子愛のテーマで多くの人に愛される作品です。しかし同時に、理想化された母親像や監督の趣味嗜好の反映、ストーリーの一貫性などについて批判的な意見も多く寄せられています。この作品に対する評価は視聴者の価値観や経験によって大きく左右されるため、『おおかみこどもの雨と雪』を「気持ち悪い」と感じる人がいる一方で、深い感動を覚える人もいます。
重要なのは、作品の持つメッセージ性や表現技法を理解した上で、自分なりの解釈を持つことです。親子の絆や成長、選択の自由といった普遍的なテーマは、現代社会においても重要な意味を持っています。気になる方は、ぜひ一度ご自分の目で確かめてみてください。きっと新たな発見や感動が待っているはずです。